A美容室はオープン当初、多くの新規客を獲得して売上げを伸ばした。しかし、2年目に入ると売上げの伸びが鈍化し、前年割れの月がみられるようになった。

根本的な原因を突き止める


 売上げの伸びが鈍化する根本的な原因を突き止めるため診断を行った。

 売上げは「客単価」×「客数」である。まず客単価を調べてみると、前年対比106%であった。しかしその一方で、客数は前年対比91%であった。このため客数に注目して原因を追究した。

 A美容室は新規客の再来率が極めて低く、多くの新規客は2回来店していない。しかし、少数ではあるが2回来店した場合は、極めて高く定着していた。

 お客様の満足度は再来率に影響する。そのためアンケートによってお客様の満足度を調査した。その結果、お客様の満足度に問題はなく、むしろ高い評価を得ていた。一般に美容業では、スタッフの職場への満足度がお客様の満足度に大きく影響する。ゆえにお客様の満足度に問題がある場合、スタッフの職場への満足度にも問題があることが考えられ、組織・人事面にも注目する必要があるが、今回はその必要はないと判断した。

 マーケティング面に注目すると、顧客をリピートさせることよりも新規客の獲得のみに重点を置いたプロモーションを行っていた。そこでオーナーとの面談を通じ、これまでの経緯とプロモーションついての考え方をヒヤリングした。

 A美容室は立ち上げのため、フリーペーパーにクーポン広告を掲載し、新規客を獲得するプロモーションを開始した。その効果は大きく、多くの新規客を獲得した。しかしその効果ゆえに、顧客をリピートさせることよりも新規客を獲得することのほうが優先され、さらにその意識が高まっていった。これが売上げの伸びが鈍化する根本的な原因であると判断した。

 なお、A美容室の外部環境に注目すると、人口は横ばいにもかかわらず、競合美容室は増加していた。

改善策を講じる


 売上げが鈍化する根本的な原因、経営方針などの内部状況と外部環境を考慮し、次の改善策を講じた。

 オーナーをはじめ全スタッフに、「新規客を獲得することは大切である。しかし、顧客をリピートさせることにより、安定した売上げを確保できる」という考え方を理解させ、意識改革を図った。

 新規客に対して、2回目の来店時にカットが割引きになるチケットを徹底配布し、新規再来率の改善を図った。


売上げアップへ


 コンサルティングを開始して1年。新規客数は前年対比94%と減少したものの、新規再来率が改善したことによりリピート客数が前年対比124%、総客数で前年対比117%となった。また客単価も104%と上昇し、この結果、売上げを前年対比121%とアップさせることに成功した。

(土 田 正 憲)